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経営2026-07-08

社長が全部やる会社は、優秀なんじゃない。孤独なだけだ

才木一真 / NOMADENSE 代表

夜11時に、社長からLINEが来たことがある。

「明日の面接、たぶん来ないと思います」

その一文を見て、なんとも言えない気持ちになった。面接のドタキャンが読めてしまうこと自体もそうだけど、それをこの時間に、社員でも家族でもなく、外部の人間である自分に送ってきたことが、この人の状況を全部物語っていた。

「全部自分でやるしかない」の正体

「全部自分でやるしかないんですよ」

中小企業の社長から、この言葉を何度聞いたかわからない。朝は現場に出て、昼は見積もりを書いて、夜は事務所で経理をやる。倒れないのが不思議なくらいの働き方をしている人が、たくさんいる。

そして本人は、それを「普通のこと」だと思っている。

でも普通じゃない。ただ、そう言ってくれる人が周りに一人もいなかっただけだ。社員には弱音を見せられない。家族に話しても「また仕事の話」で終わる。相談できる相手がいないことが、実は人手不足そのものより、社長を追い詰めている。

資材は4割上がったのに、値上げは言い出せない

なぜこんなに全部を抱え込むのか。理由の一つは、お金だ。

建設資材は2015年から4〜5割上がっている。塩ビ管やサッシ、鋼材、生コン。現場のコストは容赦なく膨らんでいく。

なのに、下請けの立場になるほど値上げを言い出せない。中小企業庁の調査でも、取引の下流にいくほど価格転嫁を「0割」と答える会社が増える。上がった分を、そのまま自分たちで被っている。

削られた利益を、社長はどこで埋めようとするか。自分の手間だ。事務員を雇う代わりに自分が経理をやり、外注する代わりに自分が見積もりを書く。「人を雇う金がない」から「社長が全部やる」に行き着く。この流れが、あちこちで起きている。

領収書に月20時間かけていた社長

社員3人の工務店に、月末になると領収書を段ボールから出して、一枚ずつ手入力している社長がいた。

かかっていた時間は、月20時間。丸2日以上を、机の上の紙の山に使っていた。

やったことはシンプルだった。領収書を撮ってLINEで送るだけで処理が終わる仕組みに変えた。月20時間が、月1時間になった。

浮いた19時間で、社長は現場に戻れた。後日その社長に言われた言葉が忘れられない。「うちの会社、何かがおかしいと思ってたんです」。おかしいのは社長じゃない。やり方だっただけだ。

コストは削れなくても、時間は取り戻せる

資材の値段は、一社の努力では下げられない。取引先との力関係も、すぐには変わらない。社長にはどうにもできないことが、確かにたくさんある。

でも、社長の時間は取り戻せる。事務や経理や、本来は社長がやらなくていい作業を一つずつ手放していけば、現場に戻る時間も、人のことを考える時間も、少しずつ戻ってくる。

一番いけないのは、全部を一人で抱えたまま「これが普通だ」と思い込んでしまうことだ。

もし今、朝から晩まで自分一人で回している自覚があるなら、一度だけでいいから、何を手放せるかを一緒に棚卸しさせてほしい。上から目線でやり方を教えるつもりはない。隣で一緒に、どこから軽くできるかを考える。月額で伴走しているのは、そういう理由だ。一人にさせないために。

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